〈物語のタネになる感情〉vol.1 『Twitterの閲覧数が制限された時、私は人間のことがすきではないのだと気が付いた』

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深夜、何気なくTwitterを開くと『現在ツイートを取得できません』と表示され、何度更新しても最新のツイートが読み込めないエラーが発生していた。

別にそれ自体はよくあることだ。イーロン・マスク氏がTwitter社を買収してからというもの、予告なしのアップデートやエラーなど日常茶飯事だった。個別にリストへ振り分けている親しい方たちのツイートのみを覗きに行くと、皆が私と同じように戸惑いながらも『寝るか』とツイートし眠りにつく判断をしたようだった。私もスマホをそっと閉じてベッドへ向かう。

いつものように、明日には不具合が解消されているだろう。

閲覧制限祭。タイムラインは阿鼻叫喚の図だった。

翌朝。Twitterは阿鼻叫喚の図であった。凍結祭りが起きたのも記憶にまだ新しいが、タイムラインやトレンドの荒れようはその比ではなかった。ツイッター不具合、イーロンマスク終わってる、挙句の果てには【ツイッターサ終】までがトレンドに踊る。『昨日未明、全世界から空気が消失しました』と宣告されたかのように誰も彼もが荒れ狂っていた。

私も当然焦りはした。趣味とはいえVTuber活動をしている身にとって一番の発信場所がまともに機能しないのは死活問題である。それを省いたとしても、私もそれなりにはツイ廃である。四六時中スマートフォンが右手から離れないほどには中毒になっている自覚はある。しかし更新されないのであれば仕方がない。壁に向かって恨み言を吐くのも面倒だと感じそっとスマホをテーブルへ置き、私は洗濯機を回すところから家事を始めた。

一通り片付きソファに腰を下ろした頃、私は『別にTwitterがなくても何の問題もなく生きていけるな』ということに気が付いた、それは水に落とされて初めて『あら私、水中でも呼吸ができる種族だったみたい』と気付いてしまったような感覚だった。

頭の中から靄が晴れていく。

私は、それに居心地の良さを覚えてしまった。

どうやら私は、あまり人間がすきではないらしい。

4,000人以上もフォローしていると、4,000通りの人間の思想やつぶやきが目に入る。

SNSが普及する前は物理的に知りえなかった数の人生がいとも簡単に見れてしまっていることは、冷静に考えれば異常だ。私はSNSを始める前よりも、今の方が“人間”を嫌いになっていることに気付いてしまった。

もちろん、直接お会いしたりSNS上で何度もお話している方のことは好意的に思っている。この場合の“人間”とは、直接的な絡みがないけれどツイートなどで目に入ってしまう方達を意味する。

【無料でも使い勝手が悪かったら意味ない。課金で解消なんて馬鹿げている】【Twitterは終わるので私が登録してる新しいSNSをお勧めします! 是非登録していって!】【イーロン・マスクは終わっている。ユーザーのことを何も考えていない】など、四千者が四千様に言葉の濁流を作り出している。一度呼吸をしてしまったからこそ、これまではスルーできていたそれらの言葉が直接私の心を殴りつけてきた。

頭の中ではキンブリーが『怨嗟の声など! 私にとっては子守唄に等しい!!』とニヤニヤ笑っていた。ごめんキンブリー。俺はどうやらそこまで強くないらしい。

人間は見えすぎてはいけないのかもしれない。

福沢諭吉は学問のすゝめの最後をこう締めくくっている。

『人にして人を毛嫌いするなかれ』

諭吉さんが現代に生きて、このTwitter閲覧制限の荒れ具合を経験していたらこの文言は変わっていただろうか。あなたが生きていた頃は、見える人の数に限りがあったからそう言えたのではないだろうか。そう思いはするけれど、諭吉さんが言いたいことも理解はできる。

『人間の分際で人間を嫌ということは、本来とても偉そうでおこがましいことだ』と言うことだろう。そういえば冒頭で『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず』って言ってたな。ごめんね先に末尾から思いだして。

私が人間を嫌いになった原因は、間違いなくSNSにある。本来は出会わなかった、クロスしなかった人生の範疇を無理やりこじ開けてわざわざ「あなた嫌い!」と言ってしまうのは確かに、偉そうでおこがましいことだと思う。そんな当たり前のことに今回の閲覧制限事件は気付かせてくれたのかもしれない。

私は気付きを与えたくれたイーロン・マスク氏に感謝しながら、制限が緩和されたTwitterをそっと閉じた。

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